最初の仕事はくじ引き?

さて、今回も前回に引き続き、知財業界経験者にその経験談を伺ってみました。参考にして頂けましたら幸いです。

ピータードラッカーは著書[1]で以下のように述べています。

「自らの成長のためには、自らに適した組織において、自らに適した仕事につかなければならない。・・・学校を出たばかりでは、自らのことはほとんど何もわからない。大きな組織のほうが仕事ができるのか、小さな組織のほうができるのかは分からない。人と一緒に仕事をする方が良いのか、ひとりのほうがよいのか。・・・最初の仕事はくじ引きである。最初から自らに適した仕事に就く確率は高くない。得るべきところを知り、向いた仕事に移れるようになるには数年が必要である・・・」(「プロフェッショナルの条件」P・F・ドラッカー著より)

知財未経験者が特許事務所に入所、又は企業の知財部に配属されると、通常は先輩弁理士(社員)の下に従事して、知財業務に関する様々な指導を受けます。

最初にどの先輩に従事するか?

これによって、知財業界人としてのキャリアが大きく変わってきます。知財業界では、最初に指導を受けた先輩に似たタイプの業界人になる人が多いからです。

業界経験者の一人として言わせて頂けるなら、最初に就職すべき企業・特許事務所は、ぜひとも慎重に選んでほしい、と思います。

知財業界には様々なタイプの人がいます。

例えば、リスクテイカー。つまり、広い権利を取得するためであれば、特許庁の審査官と争うことを厭わない人。この発明には進歩性が無く、大したことが無い、と周囲から笑われても、果敢に特許出願に踏み切る。特許取得は「気合、熱意」をモットーに、中間処理では、膨大なページ数の意見書を書いたり、特許庁を訪問し面接で審査官を説得して特許査定に持ち込むことを好むタイプ。

堅実派。特許庁の審査官と争うことを嫌い、拒絶理由の一切無い特許明細書を書くことを信条とする。「努力」「根性」という言葉を毛嫌いし、必要最小限の努力でスマートに仕事をこなすことをモットーとするタイプ。

職人肌。あまり社交的ではないが、明細書をコツコツ作成することが、とにかく向いているタイプ。

社交的な人。営業マンとして新規の顧客を獲得する能力に長けている人。巧みな話術を活かし、特許紛争の交渉の場や、特許庁での面接審査等で成果を発揮したり、セミナー講師として活躍したりする人。

特許書類(明細書)の書き方にも様々な流派があります。例えば、請求項を構成要件列挙型で書くことを好む弁理士、おいて書きで書くことを好む弁理士。(一定の実績のあるベテラン弁理士でも、流派が違うクライアントにあたったり、特許事務所に就職したりすると、低評価を受ける場合もあります)

ベテランの知財業界人の中でも歩んできたキャリアは様々です。

海外企業との様々な係争事件を経験してきた人。米国には、パテントトロールと呼ばれ、特許を盾に、多額の賠償金を要求してくる集団がいます。自ら事業は行わず、ただ特許だけを保有し、特許に抵触する第三者を訴える。自らの発明(技術)の保護を本旨とする特許制度の趣旨から考えれば褒められたものではありません。しかし、一方で、特許担当者の立場で見ると、彼ら(トロール)の特許の取り方、特許係争の進め方は巧みです。敵ながら感心させられることもあります。海外企業との紛争事件を多数経験している人は、多くの弁理士とは違った視点を持っています。

また、特許庁で審査官の経験がある人もいます。審査する立場で、「こうすれば特許をとれる」ということに関するノウハウを色々と持っています。

逆に係争経験は全くなく、明細書作成一筋でキャリアを積んできた人もいます。

また、補助者(非弁理士)ではあるが、明細書作成の腕は確かな特許技術者もいます。特に、弁理士の資格を有さずに何十年も業界で活躍している人は、真の実力者ではないか、と思います。

* * * 

以上のように、知財業界には様々なタイプの人がいます。

最初にどの先輩に従事するかは「くじ引き」に近いものがあると言えるかもしれません。ただ、この点はどの業界にも言えることかもしれませんね。所謂、運命というものなのか、巡り合わせなのか・・。

もし、どの事務所・企業に転職をするか迷っているのであれば、自分の性格や目指す方向に鑑み、上記のことも参考にして頂けると幸いに思います。


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